界面活性剤の働き(作用・機能)

 

混ざり合わないものを混ぜます(乳化・分散)

「あの二人は水と油の関係だ」という表現があり、水と油とは仲の悪い見本です。一緒にするとすぐ分離しますが、界面活性剤を少量加えて、かき混ぜると簡単に混ざり合って、安定な乳化液(エマルション)をつくることができます。またススやカーボンブラックは水の表面に浮かんで混ざり合いませんが、界面活性剤を少量加えてかき混ぜると、均一で安定な分散液をつくることができます。
このような界面活性剤の働きを活かしてアイスクリームやマーガリン、塗料やインキなどがつくられています。

 

濡れやすく、しみ込みやすくします(湿潤・浸透)

ハスの葉っぱの上で水は水玉になりコロコロ転がりますが、界面活性剤をちょっとだけ溶かした水は水玉にならず表面に広がります。それは水の表面張力が弱くなったためです。
この界面活性剤の働きを利用して、農薬を均一に薄く葉っぱにつけて、少量で大きな効果を出すことができます。また、このように水に濡れやすく、水がしみ込みやすくなるので、繊維や皮などに染料や仕上げ剤を均一に浸透させるのにも役立っています。

 

泡を立てたり、消したりします(起泡・消泡)

界面活性剤を溶かした水は泡が立ちやすくなります。これは水の中に気泡を取り込んで、壊れないように安定化させるからです。またある種の界面活性剤は、逆に泡を立ちにくくすることもでき、泡が立つと困る場合に使用されます。

 

汚れを落とします(洗浄)

ほこりやゴミの汚れは、こすれば水でも落とせますが、油や汗は布にしみ込むとなかなか落ちません。界面活性剤を用いるとまず布と汚れのそれぞれの表面を濡らし、布と汚れの間にまでしみ込んで汚れをはがし、さらに汚れを乳化、分散させて取り除いてしまいます。すなわち界面活性剤が持つ複数の機能が連携することで、汚れが取り除かれるのです。家庭用洗剤や化粧石けんだけでなく、洗浄ということはいろいろな工業で重要な工程です。たとえば毛織物は羊毛の汚れを洗うことからはじまり、布地になるまで何度も洗われます。紙も木材からパルプをとり、洗浄・漂白することから始まりますし、金属工業でも脱脂剤や洗浄剤がなくてはなりません。

 

そのほかに、こんな働きもします

①柔らかくしたり、滑りをよくします(柔軟・平滑)

界面活性剤は、物の表面に吸着して、その表面の滑りを良くする性質があります。
油などと混ぜていろいろな工業における生産工程での作業性の向上にも役立っています。
たとえば、糸に撚りをかけたり編んだりする工程で滑りをよくし、良い糸や布をつくります。布地が柔らかく肌ざわりが良いのも界面活性剤が働いているからです。金属を薄い板にしたり針金をつくるときの圧延油や伸線加工油とか、プラスチックの滑りを良くする滑剤なども、この界面活性剤の働きを利用したものです。

②静電気を防ぎます(帯電防止)

合成繊維やプラスチック製品は、すぐ静電気を帯びてホコリや汚れがつきやすくなります。また工場では静電気の火花は事故のもとになることもあります。
ある種の界面活性剤は、滑りやすくすることで静電気の発生を抑えたり、表面に水を吸いやすい膜をつくることで静電気を逃がしやすくします。合成繊維やプラスチックの中に練り込んだり、表面に塗ることで、静電気がたまることを防いでいます。

③錆を止めます(防錆)

界面活性剤は金属表面に吸着することで、錆の原因になる酸素(空気)と水の金属への攻撃を防ぐ保護膜になります。金属が錆びるのを抑える防錆剤として利用されています。

④染めむらをなくしたり、色落ちを防ぎます(均染・固着)

界面活性剤のなかには、繊維にゆっくり染料を吸着させて染めムラのできないように均一に染める作用のあるものもあります。これらの工夫によってカラフルな布地がつくられています。
また染料を繊維に固着させ、洗っても色落ちしない働きをもっている界面活性剤もあります。

⑤菌を殺します(殺菌)

病院などの手洗い消毒液には、カチオン界面活性剤や両性界面活性剤の水溶液が使われています。細菌は一般に表面に負(マイナス)の電気をもっており、正(プラス)の電気をもつカチオン界面活性剤や両性界面活性剤が容易に吸着し、細菌の細胞膜を破壊したり、表面を覆ったりして殺菌します。

 

これらの働きは、ほんの一部です

界面活性剤は種類も多く、性質もお互いに異なっています。これらの界面活性剤をうまく組み合わせ使いこなすといろいろな働き(作用)をすることができるようになり、その働き(機能)により「○○剤」と呼ばれています。
産業界では、「困ったことがあればまず界面活性剤に聞いてみよ」と言われるほどです。目的に最も適した性能の界面活性剤を提供するのが、界面活性剤工業の役目なのです。

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